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東京高等裁判所 平成6年(ラ)3号 決定

1 本件不動産競売手続においては、同競売開始決定による差押登記時の右不動産の所有権の登記名義人(以下「現所有者」という。)を執行当事者として手続を進めることとなるから、本件不動産競売手続において配当要求の参加資格を有するのは、第一次的には、右現所有者に対する債権者と解することができる。

しかしながら、現所有者は、仮差押えの登記後に所有権移転登記を経由した者であるから、仮差押えの帰趨いかんによっては、現所有者の所有権の取得は、手続上無視される結果を招来するかもしれないという不安定な立場にあり(手続相対効)、ことに、仮差押えが本件不動産競売手続における配当期日までに本執行の要件を具備したような場合には、本件不動産の売却代金の配当にあずかることができるのは、抵当権者である差押債権者のほか、仮差押債権者及び仮差押えの登記時の所有権の登記名義人(以下「前所有者」という。)に対する債権者であることを考慮すれば、本件不動産競売手続における執行当事者が現所有者であることを理由に、前所有者に対する債権者の配当要求の参加資格を一般的に否定してしまうことは、仮差押えの効力について手続相対効を採用した民事執行法の立場(同法八七条二項、三項)にそぐわないとの感を免れ得ないのである。

2 次に、前所有者に対する債権者に対しても配当要求の参加資格を認める取扱いについて考えてみるに、仮差押えの登記後に短期賃貸借が設定されたような場合には、仮差押えがその効力を失わない限り、当該不動産の売却条件の決定に当たっては、右短期賃貸借を無視する取扱いがなされているところであるから、まさに仮差押えの存在を前提として執行手続を進める取扱いがなされている点で軌を一にするものであると言えるし、また、このように解するにしても、配当期日において、仮差押えの帰趨が未定の場合には、仮差押債権者が本案の訴訟において勝訴した場合と、仮差押えがその効力を失った場合の二通りの配当表を作成し、仮差押債権者及び仮差押えの登記後に登記された先取特権者等の配当額が定まらない権利者に対するのと同様に(同法九一条一項二号、六号の類推適用)、配当等を留保して供託をすることにより対処することで解決できるのであり、そして、このような措置をとることにより執行裁判所の負担が著しく増加するともいえないところである。

3 他方、仮に原決定のような立場を採って、前所有者に対する債権者の配当要求の参加資格を一般的に否定すると、この者は、後に仮差押債権者が本案の訴訟において勝訴した場合においても、本件不動産競売手続において配当を受ける機会を奪われる結果となってしまう(ちなみに、前所有者に対する債権者が、その後に、現所有者に対する債権者として配当を受けた者に対し、不当利得の返還請求をすることはできないと解される。)。

4 なるほど、現所有者を執行当事者とする手続において、仮差押えの帰趨が未定のときに、前所有者に対する債権者に対しても配当要求の参加資格を認めることは、仮差押えの手続に配当要求を認めるのと同一の結果となって不当であるという反論がありうるが、前叙のとおり、仮差押えの登記後の現所有者の地位は不安定なものであるから、これを絶対視することは相当でないし、先順位者である抵当権者の申立てによる競売手続が現に進行している以上、単純に仮差押えの手続に配当要求を認めたのと同一の結果となると評価することも妥当ではないというべきである。

5 以上のとおりであり、本件のような事案においては、現所有者を執行当事者として手続を進行せざるをえないが、配当要求の参加資格については、仮差押えの帰趨未定の間は、現所有者に対する債権者のみならず、前所有者に対する債権者に対しても配当要求の参加資格を認め、仮差押えの帰趨が定まった時点において、配当を受けることができる債権者を最終的に決定するのが、仮差押えの効力について、手続相対効を採用した民事執行法の趣旨により合致するものと考える。

(山下 高柳 中村)

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